飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続ける、中国のスマートフォンメーカー"HUAWEI(ファーウェイ、華為技術)"。
その使いやすさ、新しい技術を取り入れていく柔軟さ、日本市場への力の入れ具合、サポート体制はどれも定評があり、SIMフリー・キャリアを合わせたスマートフォンの日本シェアも、Apple、SONY、SHARPにつづいて4位と躍進を続けています。
今回、Y!Mobileの契約が2年満了を迎えたのに合わせて、Y!Mobileとほぼ同様の立場にあるUQ mobileにMNPを行いました。
それに伴う機種変更で、UQ Mobileの独占販売モデルであるスマートフォン「P9 Lite PREMIUM」を入手しましたので、レビュー・ベンチマークの測定などを行いました。
ワイモバイルとUQモバイル
ワイモバイル、UQ mobileはともに、格安SIMの通信会社だと思われがちですが、実際にはいわゆる「格安SIM」といわれる事業者と、「キャリア」と呼ばれる三大通信事業者(DoCoMo、KDDI、ソフトバンク)のちょうど合間に位置するような会社です。
以前、格安SIMの比較記事でも書いたように、一般に格安SIMと呼ばれる安価な通信事業者はDoCoMo、KDDIの回線を"間借り"して消費者に安価に提供していますが、その分回線の帯域幅は狭く、混み合う時間帯などでは本流であるDoCoMo、KDDIの契約者の通信を優先させたり、狭い帯域を多くの契約者で使い合うことになります。
これがよく言われる「格安SIMは、昼時・夜間は遅い」といわれる理由で、私達利用者側もそれを知っておく必要があるでしょう。
これらに対して、ワイモバイルとUQ mobileは、どちらもソフトバンク・KDDIが直接関係している子会社(より厳密にいうと、どちらも吸収合併された通信事業者)なので、本家キャリアには及ばずとも他のMVNOに比べて優れたサービスを提供出来ている訳ですね。
簡単にいえば、ユニクロでいうところのGU(ジーユー)、バーバリーでいうところの「バーバリー ブラックレーベル」のような、サブブランドだと考えていただければ分かりやすいかと思います。
このため、他のMVNOよりも価格・契約期間(どちらの会社も2年縛りがあります)などでは他MVNOよりもやや高価・制限が多いものの、より安定かつ高速な通信サービスの提供が出来ているということですね。
まあ実際のところ、どちらの会社も今現在1年目を1,000円割引して1980円、2年目からは2980円という販売戦略を採っているため、2年縛りがあるにしても強い訴求力を持っているのは間違いないでしょう。TVコマーシャル攻勢も、キャリアに並ぶくらいの頻度で見かけます。それくらい両社ともに凄まじい勢いがありますからね。
P9 Lite PREMIUMとP9 Liteの違い
HUAWEI P9 Lite PREMIUMは、UQ mobileの販売端末のなかでも比較的新しいモデルですが、価格は非常に安く、端末購入アシスト(キャリアの月月割のようなもの)を使用すれば、実質負担額は108円で済みます(2年契約時)。
さて、P9 Lite PREMIUMを検討されている方が気になるのは、2016年夏に発売されているP9 Liteと一体何が違うのか?PREMIUMと付いているだけの付加価値はあるのか?という点だと思います。そこで2機種のスペックを表にして比較してみました。
|
P9 Lite PREMIUM (VNS-L52) |
P9 Lite (VNS-L22) |
サイズ[mm] |
H146.8 x W72.6 x D7.5 |
H146.8 x W72.6 x D7.5 |
重量 |
147g |
147g |
CPU |
Qualcomm SnapDragon 617 |
Huawei Kirin 650 |
クロック数・コア数 |
8 (4 x 1.5GHz + 4 x 1.2GHz) |
8 (4 x 2.0GHz + 4 x 1.7GHz) |
RAM(メモリ) |
3GB |
2GB |
ROM |
16GB(Micro-SD拡張 最大128GB) |
16GB(Micro-SD拡張 最大128GB) |
ディスプレイ |
5.2インチ FullHD IPS液晶 |
5.2インチ FullHD IPS液晶 |
バッテリー |
3000mAh |
3000mAh |
連続待受/連続通話時間 |
606時間/18時間 |
610時間/19時間 |
OS |
Android 6.01 M |
Android 6.01 M |
カメラ |
OUT 13MP / IN 8MP F2.0 |
OUT 13MP / IN 8MP F2.0 |
カラーバリエーション |
ホワイト、ゴールド、ブラック |
ホワイト、ゴールド、ブラック |
通信方式 |
4G LTE/WiMAX 2+ CA対応 |
FDD LTE/W-CDMA/GSM |
通信速度 |
DOWN 220Mpbs / UP 25Mbps |
DOWN 150Mbps / UP 50Mbps |
Bluetooth |
v4.1 |
v4.1 |
Wi-Fi規格 |
802.11b/g/n |
802.11b/g/n |
GPS |
GPS, AGPS, グロナス |
GPS, AGPS, グロナス |
センサー |
指紋、加速度、コンパス、照度、近接 |
指紋、加速度、コンパス、照度、近接 |
さて、表を見比べてみると、基本的な部分はほぼ同一ですが、CPU、RAM、そして通信方式に差があるようです。
使う人によって重視する項目は異なると思いますが、アプリの動作安定度や、履歴の記憶数に影響してくるメモリが、P9 Liteに比べて1GB増強されているのは大きいと思いました。
CPUについては、従来のHuawei Kirin 650オクタコア(HiSilicone製)から、多くのAndroidスマートフォンに使用されているQualcomm製のSnapDragonに変更されました。
コア数はどちらもオクタコア(8個のコア)ですが、動作クロック周波数については、SnapDragon617はKirin 650から0.5GHzのダウンとなっており、CPUパワーを要求する3Dゲームなどに、どのように影響してくるのか木になりますね。
最も大きな変更である通信方式ですが、これはauのLTE方式である、"4G LTE"の対応バンドに合わせ、さらにWiMAXの高速通信回線であるWiMAX 2+にも対応し、au 4G LTEとWiMAX 2+のキャリアアグリゲーションも可能になりました。
それにより、理論上の最大通信速度は70Mbpsアップし下り最大220Mbpsとなり、安定した高速通信が可能になったといえます。
といっても実際に220Mbpsもの速度がでるわけではないですが、DoCoMoの混み合った回線をP9 Liteで使うよりは、余裕のあるau/WiMAXの回線の両方を使用できるため、他のMVNOよりも快適に通信できるのは間違いないでしょう。
開封の儀・インプレッション
オンラインでUQ mobileのサイトから申し込んだ2日後に端末とSIMカードが到着。
北海道は宅配便だと普通は中2日かかるので、配送があまりにも早くて驚きました。
外箱は正方形の化粧箱で、P9 Liteの箱と同じものが使われていますが「PREMIUM」の文字が刻印されています。
上蓋を開けると、P9 Lite PREMIUM本体が現れました。
フィルムは最初から貼ってありますが、あくまでも輸送時の傷などを防ぐためのもののようです。実際、指紋もベタベタ付きますし滑りもよくなかったので、早めに剥がすか、専用のフィルムを貼ったほうが良さそうです。
スマートフォンが乗っていた中蓋を開けると、アクセサリー類の入った小箱が3つ出てきました。どの箱に何が入っているのかは、ピクトグラムで分かりやすいように表示してあります。
付属品一覧です。
最初からケースがついてくるのはありがたいですね。ただ、素材が硬質のプラスチックで、しかも完全な透明ではなくブツブツとした滑り止めのような加工が施されて半透明に近い色合いのため、どことなく安っぽさを感じます。
なお機種のサイズやボタン類、端子の配置はP9 Liteと全く同一なので、ケースはP9 Liteのものがそのまま流用できます。
P9 Liteは人気機種なのでかなりの種類のケースが各社から発売されていますから、お好みのケースを着けたほうが良いかもしれませんね。
充電・通信用のケーブルは標準的な長さ(約1m)で、端子はMicroUSBが採用されています。個人的にはここをUSB-C端子に変更してほしかったところです。
イヤホンはiPhone付属のEarpodsを丸パクリしたようなデザインのものが付いていました(笑)
デザインは一般的なスマートフォンに多い、シンプルなタイプですね。
背面のパネルが樹脂なので、少し安っぽい印象を受ける人もいるかもしれませんが、逆にメタルだとどうしてもごついイメージが出てしまうので、女性にはこちらのほうが好まれるかもしれません。
フレームはアルミ削り出しで、エッジの部分がダイヤモンドカット、それ以外の部分はサンドブラスト加工が施されていて、とてもキレイで高級感があります。
ボタン類は全て右側面にまとめられており、電源ボタンはローレット加工(ギザギザの金属加工)されており、目で確認しなくても触感でわかるようになっていました。
これなら電源ボタンと音量調節ボタンの押し間違いも少なくて済みそうですね。
SIMトレイ・MicroSDカードトレイは端末左側、イヤホンジャックは端末上面にあります。底面にはモノラルスピーカーとマイク、充電・通信用のmicroUSBポートがあります。
Qualcomm QuickChargeなどに代表される急速充電技術については、特に言及されていないのですが、充電スピードはかなり高速でした。ただそれ以上にバッテリーの持ちが非常に良いため、頻繁に充電するような機会も少ないと思います。
また、端末を触っていて感じたのは全体的に加工精度が高いことで、バリや浮きなどもまったく無いことに驚きました。
ちなみに外観はP9 Liteとの差はほぼ無いのですが、唯一モデルナンバー(型式)がP9 LiteのVNS-L22から、P9 Lite PREMIUMはVNS-L52に変更されていました。
指紋センサーは裏面にあります。しかしその位置がかなり上部になっており、手の小さい方はちょっと苦労しそうな感じです。もう少し下でも良かったのではないでしょうか。
なお指紋の認識精度は良く、読み込みエラーはほとんど起こりません。解除までの待ち時間もほぼ一瞬です。体感的には触った瞬間解除といったレベルなので、ストレスなく使用できそうです。
カメラはHuaweiお得意のダブルレンズではなく単眼です。フラッシュ用LEDは、流行りのホワイトとアンバーの混合2色タイプ(デュアルLED)です。
電源ボタン長押しで起動します。初回起動はかなり時間がかかりました。
初回起動時は使用言語やグーグルアカウントの設定、Wi-Fiの設定などを行います。我が家では5GHzの11ac規格も飛ばしているのですが、このP9 Lite PREMIUMでは2.4GHzしか対応していないようです。
ロック画面の待受画像は、内臓のプリインストール壁紙の中からランダムで、端末を開くたびに変わる設定になっているようです。画面解像度は最近のメインストリームであるフルHD(1920 x 1080)ですが、プリインストール画像の高精細さも相まって、非常に美しく感じられました。
パット見でかなりの狭額(ベゼルが細い)ですね。画面下はボタンがないので、もう少し狭くても良かった気もしますが。
800万画素のインカメラ、通話用スピーカー、環境光の照度センサー、近接センサー、通知用LEDなどは、画面上に並んで配置されています。
ホーム画面は、アプリドロワーのないiPhoneのようなタイプになっています。このためiPhoneからでも違和感なく移行できそうです(とは言ってもUQ mobileからはiPhone5sが発売されていますが)。
また、戻る・ホーム・履歴などはオンスクリーンキーになっており、設定で配列の変更や、通知バー表示キーなどを加えた4列配置にすることも可能です。
通知領域はカスタムUIであるEmotion UI独特のものになっており、最初はややとっつきにくさを覚えるかもしれません。というのも、Androidの標準通知バーの場合だと一本指で上から下にスワイプで通知一覧の表示、2本指スワイプでショートカットキーメニューの表示というふうになっていたからです。
P9 Lite PREMIUMの場合は問答無用で通知一覧が全画面にでてくるので、やや使いにくいのですが、カスタム項目から「ドラッグ位置で決定」をオンにすると、画面左半分をスワイプで通知一覧、右半分をスワイプでショートカットメニューを表示、というふうに任意に変更できます。
プリインストールされている、HUAWEI製のミュージックプレイヤーアプリ。
iPhoneのミュージックっぽいGUIではありますが、各動作もキビキビしており、とても簡潔なUIで使いやすかったです。
またMicroSDカードに入れた音楽データをすぐに読み込み、データベースの更新などをせずともライブラリに追加されているなど、さすが純正アプリといった感じでした。
ブラウザは、Google Chromeがプリインストールされています。
画面の解像度が高いのでブラウジングがしやすく、またプリインストールされているフォントがしっかりとした日本語フォントなので、とても読みやすく思いました。
ただ、日本語入力がプリインストールがiWnnで使いにくいため、Google日本語入力などの入力アプリをインストールしたほうがいいでしょう。
ベンチマークスコア
CPU・メモリの性能を測るために、Androidベンチの代表格であるAnTuTuベンチマークと、CPUスコアが分かりやすいGeekbench 4の2種類でベンチマークスコアの測定を行いました。
AnTuTu ベンチマーク
計3回、熱ダレを防ぐために毎回5分ほどのインターバルを空けて計測しましたが、全て46000点台に収まりました。
P9 Lite(VNS-L22)のトータルスコアが53000点前後くらいということなので、やはりクロック周波数が下がっている分、CPU関連の数値は低下しているようです。
ただし、RAMは1GB増加している分、1割ほどスコアが向上していました。
実際3Dのデモを検証しているときもかなりカクつく感じがありましたので、あまりにも重たい3Dゲームなどをプレイするのは厳しいかもしれませんね。
Geekbench 4 ベンチマーク
シングルコアのスコアが701、マルチコアのスコアが2216という結果になりました。
P9 Liteはシングルコア890点前後、マルチコア3800点前後(これはフラッグシップモデル並の高スコアです)という数字が出ていますので、特にマルチコアでは、8コア分のクロック周波数の差をまざまざとみせつけられた格好になりますね。
総評
HUAWEI製の端末をしっかりと触るのは、このP9 Lite PREMIUMが始めてだったのですが、実際に触れてみてシェアを伸ばしている理由がわかった気がしました。
Androidは各社がUI(ユーザーインターフェース)に独自のカスタマイズを施していることがほとんどなのですが、P9 Liteが使用しているEmotion UIは様々な面で日本人が使っても違和感がなくスムーズに操作できるように洗練された設計になっており、iPhoneからの移行者や、始めてAndroidを使う人にも困らないようになっていると感じました。
UQ mobile限定の当モデルは、先に発売されているP9 LiteよりもCPU性能でやや劣っていますが、その分メモリの増強により動作が安定し、サクサクと作業ができるようになりました。また多くのアプリを開いてもバックグラウンドで落ちにくいというメリットもあります。Lineを開いてゲームをしてTwitterを開いてLineを開いても前の画面が保持されているのは、メモリの多さによるものです。
また通信方式の面でもau 4G LTEとWiMAX 2+の高速回線を使用できキャリアアグリゲーションにも対応しているという面でP9 Liteに大きなアドバンテージがあります。
他のMVNOに比べて、現在どの時間帯でも非常に高速な通信を提供できているUQ mobile、それに対応した「高速通信が可能なPREMIUMモデル」といえるのではないでしょうか。
そしてその高速通信が可能、使用時のストレスがほぼ無い「プレミアムモデル」が、Zenfone3などの競合機種と比べても非常に安価で手に入る点でも要注目でしょう。