スマートフォンの普及に伴って進化を続けてきた車載用ホルダー。
最初の頃は「スマートフォンを固定する」だけの機能を持つものしかありませんでしたが、無線充電や高速充電の技術が進むにつれて、様々な機能を持ったスマホホルダーが増えてきました。
しかし、ワイヤレス充電対応のスマートフォンホルダーは、信頼性に乏しい中国メーカーの製品が多く、「買ったは良いが充電できない」「クレードルが熱を持ってすぐに充電が止まる」などと言った、致命的な問題を抱える商品が多かったのも事実です。
事実、私が最初に買ったワイヤレス充電スマホホルダーも、使用開始後すぐに熱暴走し充電が止まってしまいました。
そんな折、2018年11月より日本の車載用AV機器メーカーであるカロッツェリア(パイオニア)より、無線充電規格であるQi(チー)認証、センサーによるスマートフォンの電動ホールドを搭載したハイスペックなスマートフォンホルダー「SDA-SC500」が発売されました。
信頼の置けるメーカーが満を持して発売したこの商品、私も気になっていたので、予約注文し発売日に入手できました。
今回の記事では、そのSDA-SC500の使い勝手をレビューしていきたいと思います。
購入と価格
今回、SDA-SC500はAmazonで予約購入。予約注文の最低価格保証が適用され7,160円で入手しましたが、現在はやや価格が上昇傾向で、各店舗共に在庫も少ないようです。かなり売れているみたいですね。
ただ、7,000円という価格はワイヤレス充電スマートフォンホルダーの中でもトップクラスに高額の部類に属します。
3,000円あれば、Amazonで上のような、同様の機能を持つ中国メーカーの製品が購入できますが(ただしホールド解除はセンサーではなくボタン式、またエンジン停止時は解除できない)、そこはカロッツェリアのブランド料と、付属品といくつかの追加機能、製品の信頼性の問題かなと考えています。
レビュー
まず外箱から。
普段よく買う中国製品に慣れてしまった自分からすると、びっくりするくらい作りの良い箱に入っています。箱だけでかなりコストを食ってるのではないでしょうか。
箱の開け方がわからず1分ほど格闘。iPhoneの化粧箱って、上の蓋が下の箱に被さっているだけなのに、 ギッチリと組み合わさっていて、上と下を両方持って引っ張らないと開かないですよね?そんな感じです。あのヌルーっと開く感じ。
説明書は折りたたみのものですが、必要以上に丁寧に説明してくれています。
内容物はこんな感じで、かなり充実しています。
次から一つずつ紹介していきましょう。
まずスマートフォンホルダー本体。車への取り付け方法は2種類あり、写真で使っているゲル吸盤付き自在アームをダッシュボード等に取り付ける方法と、エアコン吹き出し口用アタッチメントを使ってエアコンベントに取り付ける方法があります。
USBケーブルは長さ1m、端子はUSB Type A-USB Type Cのものが付属。被覆は付属品には珍しく断線に強い編み込みタイプとなっており、コストが掛かっています。
エアコン吹き出し口用アタッチメントはおそらく私は使わないと思いますが、吹き出し口の羽に取り付けるクリップ部分はかなり固めになっており、そう簡単には外れなさそうでした。
付属の12V/24V電源(シガーソケット)用USBチャージャーです。
USBポートがある面はピアノブラック、それ以外の部分はマットなラバー塗装になっており、高級感があります。
2ポートでどちらもクアルコムの最新高速充電規格であるQuick Charge 3.0に対応、最大3A、30Wまで出力可能となっており、これだけでも普通に購入すると1,500円程度します。
普通、このアクセサリーはコストカットのために省略されるか、付いていたとしてもおまけ程度でここまでの出力を持つものはありえないのですが、しっかり本体で最高の出力を得られるものをつけてくれる辺り、さすが日本メーカーといったところでしょうか。
オンダッシュ取り付けアタッチメントも付属します。
シボ加工されたダッシュボードでは、ゲル吸盤の吸着力が低下するため、こういうものを後から購入することもあるのですが、それすらも付属品として入っているという至れり尽くせりっぷり。しかも脱落防止のストラップまで付属しています。
こちらも普通に購入すると1,000円程度します。
ゲル吸盤付きアームは、中国製品などでもよく見るタイプと同様です。
私が今使っている中華製スマートフォンホルダーにも、これと全く同じものが使われているのですが、このタイプ、長く使っていると車の振動の影響で各部締め付け用のプラスチックボルト(特に一番右にあるアーム角度調整のネジ)が弛んでくるんですよね。
他に色々とコストをかけて頑張っているのだから、ここにも新しい独自設計のものを使って欲しかったです。残念。
本体に給電するためのUSB端子はUSB Type C。
ただ、底面にある端子の位置がちょっと残念。個人的には裏面に配置してあるほうが、ケーブルを綺麗に隠せるのでありがたかったです。せっかくの無線充電なのに、この位置にあったら普通に充電ケーブルを挿したのとほとんど変わらないですよね。
本体表面。カロッツェリアのロゴの外側、灰色の部分はラバー塗装になっており、滑り止めの役割を果たしています。
中央上部に見えるのが光学センサーで、ここがスマートフォンで塞がれると、自動で左右のアームが閉じるようになっています。こちらの動作に付いては動画で後述しますが、センサーの感知・動作速度は優秀で、ほぼストレスがありません。
また、対応するスマートフォンの最大幅は8.5cmまでですが、私が使っている6.3インチのGalaxy Note8(ケースを着けて横幅7.7cm)でもまだ余裕がありましたので、ほぼ全てのスマートフォンで使用可能だと考えて良いと思います。
下部の落下防止パーツはクリック調整がついており段階的に長さを変更できるので、お使いのスマートフォンのサイズに合わせて調節可能です。
本体裏面。ガンメタリックのようなカラーの上にクリア塗装が施してあり、高級感があります。この点は中華製品が逆立ちしても叶わないですね。
また、左右には排熱のためのベントが開けてあります。
他のワイヤレス充電器はこの部分がおざなりなことが多く、直射日光下で本体温度が上がるようなシーンではしばしば高温になり保護回路が働いて充電が停止することがあったので、カロッツェリアのこの製品はそのようなことが起こらないことを期待します。
裏面上部には、ホールドアーム開放のためのタッチセンサーがあります。
こちら、感圧式ではなく静電容量式のようで、軽く触れるだけで感知されました。
位置的にも、ちょうどスマートフォンを上から取り出そうとした時に手が当たる部分にあり、よく考えて作ってあるな、と感心しました。
ただ、手袋などを使用しているとセンサーが反応しなくなりますので注意が必要です。
本体の下部、左右には内部バッテリー状態と充電状態を示すためのLEDインジケーターが配置されています。
写真の左、緑色に光っているのはスマートフォンの無線充電状態を示しており、緑で充電中、赤で充電待機中、青で充電完了と、3色でわかりやすいものになっています。
運転席から見て左側、中央のダッシュボードに設置した場合、ちょうどこのLEDが見えるようになっているため、スマホをいじらなくても充電状態が一目瞭然なのも良いですね。
写真の右、青色に光っているのは、本体内アーム動作用バッテリーの状態を示すもので、こちらは青1色でLEDの点灯・点滅パターンの変化で状態を表示します。
この製品の優れた特徴として、電動ホールドの弱点であるエンジン停止時(=USB給電停止時)でもアーム動作ができるように、内蔵バッテリーが組み込まれているという点があります。この機能を有するのは、私が調べた限りこのSDA-SC500だけです。
また、USBケーブルと電源さえあれば動作するため、設置場所を車内に限定されない点も優れています。
実際、今回のレビューは全て自室で撮影しましたが、QC3.0対応のUSBアダプタからコードをつなぐだけで問題なく動作していました。色々と用途が広がりそうですね。
私が使っているGalaxy Note8ではワイヤレスで10W給電が可能で、ほぼほぼ有線に引けを取らないスピードの急速充電が可能でした。
無線充電対応のiPhone(X, XS, XS Max, XR, 8, 8 Plus)では最大7.5Wで急速充電可能なので、こちらもかなりの速度で充電できるはずです。
ホールド動作動画
電動ホールドの動作をわかりやすくするため、動画にしてみました。
アームが閉じる時の光学センサーの感度はかなり鋭敏で、置いた瞬間に反応します。
アーム開放時のタッチセンサーは長く触れるのではなく、軽くタッチするように触れると感知します。
ワイヤレス充電の開始速度も早く、動作に関して不満はありませんでした。
まとめ
まず、ほぼ同機能で3,000円程度の安価な中華製品と比べて、SDA-SC500の価格は高いです。
発売したばかりということもあるので、そのうち熟れて下がってくるかとも思いますが、それでも5,000円を切ることは当分ないでしょう。
しかし、レビューでも書いたように、付属品にかなりのコストをかけています。
USB-C編み込みケーブル、QC3.0対応2ポート30Wチャージャー、ダッシュボード取り付けアタッチメントの付属品だけでも、全て購入すると3,000円近くかかります。
また、中華製品にない独自の機能、例えばコストのかかる静電容量式タッチセンサー、エンジン停止時でも使える内蔵電池、動作のわかりやすいLED表示、高品質な本体の仕上げなど、思いつくものをざっと並べただけでも、価格なりの付加機能があることがわかると思います。
そう考えると、7,000円という価格はそこまで高くないのではないでしょうか?
ただ本文でも述べているように、ここまでやるならアームの方も汎用品を使うのではなく独自設計で徹底的やって欲しかった、という思いはありますが。その点はパイオニアの次回作に期待しておこうと思います。
アクセサリーの充実さについては、全員が全員、上記の全ての付属品を必要とする訳ではないとはいえ(実際、私もUSBチャージャーは不要でした)、あらかじめ必要なものを全てパッケージングして、誰にでも使用できるようにする姿勢は、評価に値しますね。無線充電は機械の規格が合致していないと最大限のパフォーマンスをが発揮でないので、こういった試みは素晴らしいと思います。
日本メーカーの安心感、「おまけではない」アクセサリーの充実による追加の付属品購入不要、よく考えられた電動ホールドのギミックなどを考えれば、中国メーカーの動作するかわからない安価なものをギャンブルでいくつも買うより、こちらを買っておくのが安心なのかもしれません。