1世代前の一眼レフカメラのメイン基盤を丸ごと交換して、新しいモデルと同等にする。
そんな前代未聞のサービスが発表されたのが、PENTAX K-1 Mark IIが発売される直前の2018年2月のことでした。
そのサービス発表から早7ヶ月。ようやく私のPENTAX K-1もK-1 Mark IIへ進化しましたので、アップグレードサービスの仔細などを書き記しておこうと思います。
基盤を交換するだけ?
発表当初は「メイン基盤をK-1 Mark IIと同じものに交換する」「同時にアクセラレータユニットが追加される」という情報しか出ておらず、価格は54,000円とアナウンスされていました。正直に言って「基盤を交換するだけで五万円!?」という思いのほうが強かったのですが、とある記事を読んで考えが変わりました。
それがデジカメwatchのこの記事。
実際にアップグレードサービスを行なっているRICOHサービスセンターへ、筆者のK-1をアップグレードする工程を特別取材したものでした。
そこで分かったのは「ただ単にメイン基盤を交換するだけではない」ということと、「むしろ交換してからが本当のアップグレード作業」ということでした。
メイン基盤を交換した後は、気の遠くなるような各種調整作業行程が待っており、そのために1人あたり一日2、3台しか完了できないというのですから、おそらく1台の調整にざっくり見積もっても半日はかかるのでしょう。
それにかかる工賃やら部品代やら人件費を考えたら、54,000円でも出血大サービス価格なのではないか?と思い改めたのでした。
予約は6月に
デジカメWatchの記事を読んでからは、アップグレードしない、という選択肢は頭の中に全くなかったものの、現状一眼レフをこの1台しか持っていないため「使えるカメラがない」という状態に陥ることに気づき、色々なイベントと重ならない日程を探って修理時期をあたふた迷っているうちに、1度目のWeb予約枠が全て埋まってしまいました。
その後、5月に入ってからまた8月以降の枠が設けられましたので、埋まらないうちに8月第3週〜4週の枠でアップグレードサービスを予約。
一応RICOH IMAGINGから「予約を受け付けました」というメールはあったものの、それ以降は予約日が近づいても直前連絡などは梨の礫でした。
私の場合予約後すぐにカレンダーに登録したため、予約前日に通知が出たので気づいたものの、せめて前日に1通自動送信メールをくれても良かったのでは…と思います。
アップグレード作業にかかる日数は3週間程度。ただしこれはWeb予約をした場合の数字で、予約なしでの持ち込み・送付は受け付けてはもらえるものの、2ヶ月以上の時間がかかるとのことでした。
送付〜受け付けまで
直接持ち込みは地理的な面から出来ませんでしたので、リコーのピックアップリペアサービスを使用して送付することにしました。
これはヤマト運輸が専用の箱を持って直接集荷に来てくれるもので、配達伝票の用意や荷造りが不要ですので、とても楽でした。
送付時の送料はこちら持ちですが、ピックアップリペアサービスの場合はアップグレード料金とともに、返送時に請求されます。
ピックアップしてから数日後の8月27日にはRICOH SCの担当者から「お預かりのお知らせ」が入り、料金・完了日について、連絡がありました。
この時のアップグレード完了予定日は9月18日頃とのことで、9月7日に苫小牧港に入港する「砕氷艦しらせ(「宇宙よりも遠い場所」というアニメで登場したので見に行きたかったのです)」の一般公開には間に合わないな、残念…と悔しがっていたのを覚えています。
しかしそんな折、9月6日に北海道胆振地方を最大震度7が襲った「北海道胆振東部地震」が発生。
「しらせ」は入港前日で苫小牧港近くにいたこともあり、翌日から被災者支援のために苫小牧西港に寄港、入浴支援や炊き出しなどを行なったのでした。私は被災当日は停電のため自宅で水シャワーを浴びたものの(真っ暗な中で浴びる冷水は呼吸が止まりそうでした)、7日午後から自宅が通電したので、それ以降は風呂にも入れたため「しらせ」内部には入っていません。
また、当然ですが8〜9日で予定されていた一般公開は中止になりました。「しらせ」は実際に南極大陸に行く船で、スケジュールもびっしり決まっているため、次回寄港がいつになるのかも分かりません。
ぜひまた苫小牧港に、今度は平常時に来て欲しいですね。急な予定変更にも関わらず、被災者のために全力で援助をしてくれた「しらせ」をはじめとする海上自衛隊の方々には感謝の言葉しかありません。
私の方ももうカメラが間に合うとかそういうレベルを大きく通り越してしまい、復旧のために忙しい日々を過ごしました。
受け取り
リコーSCから完了・発送の連絡があったのは9月10日。地震の影響はまだ残りつつ、被災地域以外は荷受・配達の受け付けを再開し、物流も回復し始めた頃でした。
到着したのは12日。地震から1週間もしないうちに、東京から北海道への荷物をいつも通りの日数で配達してくれたヤマト運輸、ひいては日本の物流網は、本当に優秀だと思います。
カメラは送付時に使ったものと同じ箱に入って届きました。
支払った金額はアップグレード代金54,000円+ピックアップリペアサービス代金1,836円の55,836円でした。ちなみにヤマトのコレクト宅配便はクレジットカードも使えます。
ヤマトのパソコン宅急便は以前にMacBook Proの初期不良時に使ったことがありますが、基本的には大きな外箱の中にシュリンクができるような折りたたみ式の緩衝用ダンボールが入っています。
黄色い修理明細書はこれ以降の修理保証書(6ヶ月有効)になります。
そして3週間ぶりのマイカメラとのご対面。
カメラが無いと、自分の半身がなくなったかのようで、本当に落ち着かない3週間でした。「あの写真撮りたい」と思っても撮りに行けないのはかなりのストレスでした。やはりもう1台サブカメラが必要ですね。
K-1 Mark IIになって、外見上の変更点はごく僅か。まずはグリップ右側にある「SR(シェイクリダクション)」バッジが「II」表記に変更されています。
もともと付いていたSRバッジは、こうして丁寧に袋詰めされて返却されます。
とまあ返却されたはいいものの、これ、特に使い道が思い浮かばないですね。新しいIIを剥がしてSRに戻したら、それこそK-1とK-1 Mark II(アップグレード)の差がほとんどなくなってしまいますし。
また、モードダイヤル下にある機種名「K-1」表記に変更はありません。アップグレードでは無い「純粋な」K-1 Mark IIは、ここが「K-1 II」になっているので、すぐに見分けられます。
外見上の変更点その2。三脚ネジの下、製品ラベルが剥がされ、K-1 Mark IIのものに貼り替えられています。ただし、バッテリー下にあるシリアル番号はそのままです。
艦橋部液晶・メイン液晶に貼ってあったスクリーン防護フィルムはそのまま帰ってきました。こうしていつも持つ位置で見てみても、一体何が変わったのか全くわかりません(笑)。
ソフトウェアバージョンはPENTAX K-1 Mark IIになっています。もちろん、現時点で最新のファームウェアに更新済みでした。
また、撮った写真のEXIF情報を確認したところ、しっかりと「PENTAX K-1 Mark II」で吐き出されていました。
確か送付段階ではイメージセンサーに取れにくい汚れが付いていたのですが(ペンタ棒も買いましたが、イメージセンサーを傷付けそうでしっかりと使えていません)、綺麗にクリーニングされて戻ってきました。
こういった基本的な整備のほかにも、SRユニットやらAFセンサーの調整など、目には見えないところでかなり人の手が入った末に私のところに戻ってきたのだと思うと、感慨深いものがあります。
外箱やアクセサリーは付属しませんが、一応「新たにカメラを買った」扱いになるのか、SILKYPIXなどが入ったCD-ROMと、K-1 Mark IIの取扱説明書が同封されていました。
なんだか初めてK-1を手にした時のようで、ワクワクしながら説明書を読みました。
さらに封筒に入った手紙?が。開けてみると…
リコーイメージング社長からのメッセージでした。
ほんの1通の印刷物なのですが、こうしてユーザーを大事にしてくれているのがわかると、PENTAXにいつまでもついていこう、という気になります。もとよりほかに移る気はあまり無いのですが。
親会社リコーの本業(オフィス機器事業)がかなり危ういので、心配は心配ですが、カメラ事業に関してはそうやすやすと手放さないと信じています。
K-1 Mark IIの性能は?
K-1 Mark IIは光学系が変わったわけでは無いので、目に見える大きな変化はありません。
性能上の2大進化ポイントとしては「ISO感度の拡張(204800→819200まで)」「手持ちリアルレゾリューション機能の追加(リアルレゾリューションII)」でしょうか。
ほかには画像処理やAF速度も改善されたようですが、この辺はあまりK-1との違いがわかっていません。
ただ、前の記事で「旧北炭清水沢発電所」に行った際、広角15mmで撮った写真のほとんどは、手持ちリアルレゾリューションを使用して撮影しました。
全てFlickr経由で等倍サイズで見ることができますので、よろしければご覧になってください。
リアレゾは、4枚をSRユニットを使ったピクセルシフトで撮影し、合成処理を行うのですが、手持ちの場合は三脚使用の固定撮影よりも時間がかかります(30秒くらい)。しかし吐き出される絵の解像感は素晴らしいの一言。待っている間一切の機能が使えず、連続撮影できないもどかしさはありつつも、これまで三脚がなくてはできなかったリアルレゾリューションが手軽に撮影できるようになり、気軽さが大きく増しました。
実際に手持ちリアルレゾリューションで30枚程度撮影した感じでは被写体ブレやモザイクノイズなどで、「使えない写真」が写る確率は体感的に低いため、歩留り率も高いと思います。
流石にSSが遅い高感度領域で手持ちリアルレゾリューションを使う気にはなっていませんが、メーカーによると暗い場面でも大丈夫なようなので、明暗気にせず積極的に活用していきたいと考えています。
今回、K-1 Mark IIにアップグレードするために、カメラと離れる期間が強制的に産まれ、改めて私はこのK-1というマニアックなカメラが大好きだったんだなあ、とこの一件で強く感じました。
K-1購入から2年、これからも末長くこのカメラと付き合っていこうと思います。