先日ミラー一体型ドライブレコーダー GoSafe 268をレビューしました。GoSafe 268はソニーのExmor CMOSセンサーを積んでいることで画質が非常に高く、またレンズの性能も良いために、昼夜問わずに最高レベルの動画を撮影することが出来ました。
さて、ドライブレコーダーの心臓とも言える、イメージセンサーを含めたCMOS SoC(System-on-a-Chip)*1ですが、ドライブレコーダー業界で世界ナンバーワンのシェアを誇るメーカーがあります。それがアメリカのアンバレラ(Ambarella)社です。
アクションカムの先駆者であるGo Proシリーズにも同社のチップは用いられていることからも、性能の高さが伺えます。
そこで今回は、アンバレラのA7Lチップを採用し、横2560pxのウルトラワイドHD撮影に対応した高性能ドライブレコーダー、GoSafe 520を使用してみましたのでレビューしたいと思います。
開封の儀
以前のGoSafe 268に比べると、かなり外箱は小さめです。箱の側面にはGoSafe 520で撮影した静止画・動画を他社製品と比較した画像がプリントされており、同社の自信が感じられます。
GoSafe 268もそうでしたが、あらかじめ、ADATA製 16GB Class10 MicroSDカードが付属するのは嬉しいですね。ただ、最高画質(2560 x 1080)で撮影した場合、かなりファイルサイズが大きくなるため、64GBくらいのSDカードを購入しておきたいところです。
箱から取り出しました。GoSafe 520本体に加えて、シガーソケット用電源ケーブル、USB-miniUSBケーブル、吸盤型マウントが付属します。
様々な角度からGoSafe 520を撮影してみました。レンズ側の本体樹脂部には、うっすらとシボ加工が施されており、車外から見ても安っぽく見えません。レンズの鏡筒部はかなり出っ張っており、ガラスレンズ6枚というのも頷ける構成です。
上面にはminiUSBの給電コネクタ、電源ボタン、緊急撮影ボタン(EMG)が、液晶画面から見て左側面にはmicroUSB挿入口、HDMI出力端子があります。
基本の操作は液晶画面右に付いている4つのボタンで行います。また、液晶画面左上には緑と赤のLEDランプが付いており、赤は「録画中」、緑は「本体バッテリーへの充電中」に点灯します。
サイズ感が分かりにくいと思いますので、身近なものと比較してみました。
フリスクケースは縦3.5cm×横7cmですので、GoSafe 520の小ささがお分かりいただけるでしょうか?
フロントガラスに取り付けるタイプのドライブレコーダーは、場所によっては視界を妨げることもあるので、可能な限り小さいほうが良いと思っています。その点で言えば、GoSafe 520はかなりいい線をいっているのではないでしょうか。
取り付けしてみた
吸盤型マウントなので、フロントガラスへの取り付けはほぼワンタッチで完了します。ただし貼り付け前にはフロントガラス・吸盤をアルコールなどで脱脂をしてからのほうが、ガラスへの吸着力は上がりますので、面倒でも一手間掛けたほうが良いでしょう。
また、今回は専用のGPSアンテナと、電圧管理機能付きの常時電源ケーブルも入手しました。
GPSアンテナは前回レビューしたGoSafe 268用のものですが(GoSafe 520はGPSアンテナに非対応)、常時電源ケーブルは各機種に対応し、エンジンOFF時でもドライブレコーダーに電源を供給します。バッテリー電圧が一定電圧以下になるとバッテリー上がりを防ぐため、自動で遮断する機能も付いており、動体検知を使用した駐車中録画に役立ちます。
DJ系デミオへの常時電源ケーブルの取り付けは、助手席足下のヒューズボックスへ行いますが、この作業は以前書いたCOWON AN2の記事の中で詳しく解説してますのでそちらの参照してください。
夜間の設置イメージはこんな感じです。ボタンは光らないので、走行中などの操作は気をつけたほうがいいかもしれません。
比較動画
今回は、以前にレビューしたGoSafe 268と比較してみました。取り付け方法の全く異なる製品同士ですが、肝心のドライブレコーダーとしての性能も大きく異なっています。
撮影場所・時間は順番に、日中の郊外の道路〜日中の高速道路〜夕方、西日が直撃する逆光〜夜間、街灯のない真っ暗な道〜深夜、街の光がある幹線道路沿いとなっています。
前回、GoSafe 268が様々な場面においてほとんど破綻しなかったので、今回はかなり意地悪な撮影条件で撮っています(笑)
(画質が低い場合は右下の歯車ボタンで1080pに変更して再生してください)
画質レビュー
画角
GoSafe 268もかなり広い画角でしたが、GoSafe 520はそれに輪をかけて広い視野が得られます。
当然横2560pxのウルトラワイドによるもので、特に左右の視野が重要であるドライブレコーダーにおいては、最適ともいえる解像度になっています。
▲本来まっすぐであるはずに跨道橋が、広角レンズの辺縁部では丸まって見える
広角レンズは、物理的な特性から、どうしても撮像周辺部が歪むボリューム歪曲(広角歪み)が生じますが、GoSafe 520ではそれもかなり抑えられているのがわかります。
HDR(ハイダイナミックレンジ合成)
ハイダイナミックレンジ合成は、簡単に言ってしまえば動画の適正な露出範囲を広げるために、いくつかの露出を撮影して合成することで、白飛び・黒つぶれを防ぎ、肉眼に近い自然な階調の映像を作る画像処理技術です。
特に、日中にトンネルに出入りするときや、太陽に向かって走行する逆光撮影などの場面で威力を発揮します。
シチュエーション1 トンネルを抜ける直前
撮影した動画から切り出した、トンネルを抜ける瞬間の画像です。
普通暗いところに入ると、そちらに合わせて露光量を下げているため、トンネルの外は真っ白に飛んでしまいます。
GoSafeはどちらも奥に生えている植物が見える程度まではある程度白飛びを防いでいます。
シチュエーション2 西日による逆光
次に、西日による逆光時の切り出し画像です。
逆光というのは、光学機器の性能が大きく影響してきます。非常に意地悪なシチュエーションですが、GoSafeはどうでしょうか。
GoSafe 520では空は太陽を中心に白く飛んでしまっていますが、その分路面はしっかりと描写しており、ドライブレコーダーとしての目的は十分に果たしています。
GoSafe 268は若干空の明るさに露光量が引っ張られ気味で、路面や左右の森林はやや暗くなってしまっています。写真を撮るときならベストな露光量ではありますが...
ただ、GoSage 268は取り付け位置が高く、空と路面の比率が2:1くらいになってしまっているために、メインが空になってしまうことで露光量の調整が上手く行っていない可能性もあります。
細部の解像感
ドライブレコーダーにおいて、細かい部分がしっかりと解像しているか(読み取れるか)は、万が一の事故時にナンバープレートの番号を読み取る必要があることなどを考えると、とても重要な要素だと思います。
そこで、中央部と辺縁部に映る2箇所を切り出し、画像の解像感をチェックしてみました。
シチュエーション1 道路案内標識
どちらも細かいローマ字部分まで、問題なく読み取りは出来ますね。
シチュエーション2 道路脇に立っている看板
こちらも番号などの読み取りはどちらも問題なく出来ますが、水平視野の広いGoSafe 520のほうがよりクッキリと描写されているのが見て取れます。
夜間性能(高感度性能)
夜間の高感度性能はどちらも高いレベルにありますが、はっきりと明るいものを明るく映すGoSafe 268とは違って、GoSafe 520はやや大人しめの印象を受けます。画像左にあるTSUTAYAの電光看板に注目していただくと、強い光源に対する処理の仕方の違いが分かりやすいと思います。
どちらの機種もEV値が調節でき、今回は±0で撮影していますが、GoSafe 520のほうは場合によっては露光量を上げたほうがいいかもしれませんね。
ここはやはり暗所に強いExmorセンサーを搭載するGoSafe 268が優秀だなと感じました。
機能レビュー
駐車録画(動体検知)
常時電源ケーブルを使用している時、またはモバイルバッテリーで給電している時(後述)、設定で「動体検知」をオンした後、カメラ内の映像に1分間動きがない場合は、動体検知モード(監視モード)に切り替わります。
カメラ映像に動きを検知した場合はその瞬間から録画が開始され、1分間動きがないと再び監視モードに切り替わります。
クルマに戻ってきた際は、設定で「動体検知」をオフにする必要があります。
動画は普段のモードと同じ画質で記録されるため、非常に高画質で向かいの車のナンバーも拡大なしではっきりと読み取れます。
ただ記録されるフォルダも駐車録画専用ではなく通常走行時と同じ場所に保存されるため、再生時は注意が必要です。
また、常時電源ケーブルを使用しなくても、シガーソケット電源を取り外して、代わりにモバイルバッテリーと付属のminiUSBケーブルを使用することでも駐車録画は可能です。
今回は上にあるCellevo Stick 14000mAh モバイルバッテリーを使用してみましたが、問題なく撮影出来ていました。
なお、夏の炎天下での駐車中などは車内が高温になりますので、モバイルバッテリーを使用して駐車録画を行う場合は細心の注意を払ってください。
ファイル形式・サイズ
ファイル形式は汎用性の高い.mov形式で、ファイルギャップは5分ごとです。
ファイルサイズは1ファイル約700MB弱で、最高解像度(2560 x 1080 30p)で、付属する16GBのSDカードにおおよそ2時間程度録画できることになります。
解像度が大きいぶん、ファイルサイズも大きくなっているので、駐車録画なども併用するのであれば、32GB以上のSDカードを用意したいところですね。
パソコンでの再生は専用ソフト(Windows/Mac対応)を使用するか、そのままインストールされているメディアプレーヤーでもすぐに再生できます。また、microSDカードが挿さるタブレットやスマートフォンであれば、そちらでも再生可能です(Xperia Tablet Compactで確認済み)。
操作性
基本的な操作は4つのボタンで行いますが、表示する画面によって各ボタンの動作がすぐ左に液晶表示されるため迷うことはないと思います。
ただボタンの感度がやや悪く、1回では反応しないことがありました。
また上にも書きましたが、GoSafe 268と違って夜間はボタンが光らないため、注意が必要です。
安全運転支援機能
ドライバー疲労警告、ライト消し忘れ警告は車側に装備されており、使用しないためオフにしていました。
速度制限標識警告
夜間などを除いて、速度標識を読み取り、読み上げ音声で警告(制限速度時速○○km)またはビープ音で警告し画面に速度標識が表示されます。
「ここから」「ここまで」などの補助標識がついている場合や上下に追い越し禁止などの別の標識がついている場合は認識しないようです。
また、40kmを90kmと読み違えるなど誤認識も若干多かったように思えました。
出発遅延警告
前方車両が前進しているのに自車が止まっている場合、ビープ音で警告してくれます。
信号待ちの一番前で止まっている場合など、前に車がいない場合は動作しないので注意してください。認識精度・速度はかなり早く、前車が進んでから2,3秒で警告してくれます。
子供やペットを同乗させる場合や、停車中書類を見たりする人なんかにはとても有用な機能でしょう。
GoSafe 520の良い点・悪い点
良い点
横2560pxの超ワイド動画撮影
なんといっても本機種の魅力は超ワイドな水平視野にあると思います。
ドライブレコーダーは上下の幅はあまり必要ではないことが多く、左右交差点などをしっかり見通せるワイドタイプのものが重宝される傾向にありますが(その最たるものは前方デュアルカメラで合成するGARMINのGDR190Jでしょう)、その点で言えばGoSafe 520は非常に使いやすく、安心できる画角だと思います。
画面隅々まで綺麗な、高い画質
広角レンズを使用すると、基本的に中央部が一番綺麗で、周辺に行くに従って歪んだりして画質が悪くなります。GoSafe 520は6枚ガラスレンズの効果もあり、広角歪みを可能な限り抑えつつ非常に高いレベルの画質を維持しています。
コンパクトなボディ
フリスクケースより一回り大きいだけという非常に小さなボディサイズながら、3.0インチのワイド液晶を装備しています。視界の邪魔にもなりにくく、設置する場所を選ばないため、どのような車にもおすすめできるドライブレコーダーになっています。
高いHDR性能
逆光時など、白飛び・黒つぶれが起こりやすい状況でもしっかりとした階調で路面を写していました。Ambarella製 A7Lチップの画像処理能力はかなり優秀なようです。
高画質な駐車録画機能
使用するたびに設定する手間はありますが、万が一の際の当て逃げ・車上荒しなどにはその高画質のために高い証拠能力を発揮すると思います。欲をいえば、動作を検知した10秒前から録画する機能や動体検知の感度を調節できればさらに良いと感じました。
悪い点
スイッチ類の操作性の悪さ
ボタンの感度がやや低くたまに2回押さなければならない場面があったり、時刻設定のときに長押ししても時刻が高速で進まなかったりなど、やや物理ボタンの操作性の悪さを感じました。夜間にボタンが光らないため、操作しにくいのもマイナスです。
GPS非対応
GoSafe 520自体にはGPSは非搭載です。また、GPSアンテナを挿す端子がないため、別売りのGPSアンテナでの拡張もできません。
最近のドライブレコーダーはGPS搭載がデフォルトになってきていますので、そろそろ最初からGPSを載せて欲しいところです。
速度制限標識警告の認識力・誤認識
使いようによっては非常に便利な速度制限標識警告機能ですが、まだ認識力が低く速度を読み違えることも多かったと使ってみて感じました。さらなるブラッシュアップを望みたいところです。
まとめ
GoSafe 520の2560pxのワイド画面は使ってみると非常に便利で、人間の視野よりも広く記録できるため万が一の際の証拠を残す目的としてはとても有利です。
また画質も非常に綺麗で、特に日中、逆光時などは性能の高さを実感できました。
夜間の高感度性能も他社製品と比べるとかなり高いレベルにありますが、SONY Exmorセンサーを搭載するGoSafe 268に比べてしまうと若干見劣りするところもあります。
ただ、ウルトラワイドHD録画かつ高画質、さらにここまでコンパクトなモデルというのは今のところ唯一無二であるのは間違いないでしょう。
軽自動車、コンパクトカーはもちろん、セダンやワゴンなど全幅の大きい車など搭載してもしっかりと左右を録画できるため、全ての方におすすめできるコストパフォーマンスに優れた銘機だと思います。
*1:画像情報を取得するセンサー部と、それを処理するCPU/GPU回路を一つの集積回路にまとめたもの